サプライチェーンマネジメント(SCM)は、幅広い業界の企業で導入 されている経営管理手法です。人手不足や市場のグローバル化などを背景に、注目度が高まっています。
今回は、サプライチェーンマネジメントの概要を紹介した上で、企業から注目される理由やメリット・デメリットを解説します。さらに、導入するまでの流れや導入する際の3つのポイントについても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、製品が消費者へ届くまでの全体プロセス「サプライチェーン」の最適化・効率化を図る管理手法のことです。適切なサプライチェーンマネジメントに取り組むことで、製品を市場ニーズが求める量・質で製造でき、消費者へ滞りなく提供する供給体制を確立できます。
なお、サプライチェーンマネジメントは、あくまで全体のバランスを取りながら最適化を目指す手法であり、各プロセスを最適化するわけではありません。
以下では、サプライチェーンの概要や、インダストリー4.0とサプライチェーンマネジメント(SCM)の関係性について見ていきましょう。
サプライチェーンとは、製品製造における「原材料・部品の調達、生産、物流、販売、消費の一連の流れ」を指します。生産プロセスを担うメーカーから見た場合、調達プロセスを担うサプライヤーや、物流プロセスを担う配送業者などの他社を含めてサプライチェーンが構築されています。
たとえば、前述のサプライチェーンマネジメントを導入した場合、調達プロセスでは在庫管理の最適化を図れるといったメリットがあります。サプライチェーンについて、より簡単に解説した内容を知りたい方は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
「サプライチェーンとは?簡単に言うと?概要や具体例について徹底解説」
2011年にドイツ政府が発表した「インダストリー4.0」は、IT技術を駆使して製造業の改革を目指すという産業政策です。サプライチェーンマネジメントにおいても、このインダストリー4.0の影響によってデジタル化が加速しています。
デジタル化を実現するメリットとして、経営資源や仕入れ先などの情報をリアルタイムで共有し、多様化する市場ニーズへ迅速に対応できることが挙げられます。
製造業が導入できる具体的な技術は、クラウド型のサプライチェーンマネジメント(SCM)システムなどです。このようなテクノロジーを活用することで、サプライチェーン上のデータの収集・分析が可能となり、的確な需要予測や自然災害リスクの低減といった活動に取り組めます。
次に、サプライチェーンマネジメント(SCM)が企業から注目されている理由を4つ紹介します。
多くの産業が人手不足に悩まされていることを背景に、少ない人数で効率よく業務を回せる仕組みやシステムの導入ニーズが高まっています。具体例を挙げると、製造業の就業者数は2002年が1,202万人であったのに対し、2022年は158万人 減の1,044万人 となっています。
このような人手不足に対応するために、サプライチェーンマネジメントが注目されているのです。サプライチェーンマネジメントを導入すれば、サプライチェーン全体での進捗状況の共有や、関連企業間の連携強化が可能となり、業務効率化に向けて取り組めます。
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新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、インターネット上で物・サービスの取引を行う「EC(電子商取引)」の需要が増加したことも、サプライチェーンマネジメントが注目されている理由です。
ECの需要増加によって、販売から配送まで一体化されたビジネスモデルが増え、サプライチェーンマネジメントを活用して効率化する必要性が高まりました。一連の業務フローの効率化を目的に、サプライチェーンマネジメントに取り組む企業は増えつつあります。
さまざまな技術革新が起こったことで、ヒト・モノ・カネ・情報などを容易に移動させられるようになり、多くの企業が事業活動のグローバル化に注力しています。国際的な企業と競争するには、サプライチェーンマネジメントの活用によって業務効率化や、コストダウンを図ることが有効です。
製造業の企業活動では、特にグローバル化が進められています。近年は、原材料価格の高騰や災害発生時の調達ルートの確保に対応するため、原材料の調達から販売までを世界規模で取り組む「グローバルサプライチェーン」に取り組む企業も少なくありません 。
インターネットの普及によって消費者がさまざまな情報にアクセスできるようになったことに伴い、市場のニーズは多様化しています。そのため、かつての大量生産・大量消費が前提の製品供給ではなく、消費者のニーズにマッチした製品を無駄なく提供する必要があります。
そこで、消費者のニーズを満たす製品情報を効率的に収集できるサプライチェーンマネジメントが注目されているのです。サプライチェーンマネジメントの導入により、市場ニーズに合致した製品をスムーズに提供できる体制を構築できます。
サプライチェーンマネジメントに取り組むメリットとして、以下の5つが挙げられます。
以下では、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
リードタイムとは、製品の製造現場において、発注から納品までのすべての工程に要する時間のことです。サプライチェーンマネジメントを導入すれば、このリードタイムを短縮することが可能です。
仮にサプライチェーンマネジメントを導入していない場合は、市場ニーズに対する需要予測が不十分になるため、消費者へ提供するまでのリードタイムが長くなりがちです。
しかし、サプライチェーンマネジメントを導入すれば、営業担当者やPOS情報から抽出した受注状況をもとに需要予測を行えることから、調達や製造、在庫管理などの各プロセスにスムーズに反映させられます。この改善活動がリードタイムの短縮につながります。
市場ニーズにしっかりと対応して製品を市場提供することで機会損失を防げるため、自社の利益向上にも役立つでしょう。
サプライチェーンマネジメントの導入によって、調達コストを削減できるメリットがあります。理由として、サプライチェーンマネジメントを導入した場合、部品の在庫状況や、適正な仕入れ量・配送タイミングといった複数の情報を一元的に把握できるようになるためです。
把握した情報を各プロセスに活かすことで、調達工程における無駄を減らしてプロセスを最適化できるため、結果として調達コストの削減を実現できます。
特に昨今は、製品に使う原材料などを含む「直接材」の調達コストの上昇を受け、消耗品や工具といった「間接材」に関するコスト削減に取り組む企業が増加傾向にあります。サプライチェーンマネジメントを導入することで、間接材に関する調達コストの削減も目指せるでしょう。
調達コストの削減に関しては、以下の記事もご覧ください。
「調達コストを削減する3つの方法|成功のポイントと価格交渉時の注意点」
サプライチェーンマネジメントを導入することで、ヒト・モノ・カネなどのリソースを合理的に活用できます。もしサプライチェーンマネジメントに取り組んでいない場合は、従来のプロセスを継承したまま、不適切なタイミングでの人材投入や過剰在庫といった課題を抱えた状態になるおそれがあります。
しかし、サプライチェーンマネジメントを導入すれば、「モノ・カネ・情報」の流れを可視化できるため、市場動向や需要予測を踏まえた適切なリソース投入が可能です。自社が抱えるリソースを最大限に活用するためにも、サプライチェーンマネジメントの重要性は高いといえるでしょう。
在庫の最適化を図れることも、サプライチェーンマネジメントを導入するメリットです。サプライチェーンマネジメント導入前は、製品へ供給すべき原材料・部品の適切な管理ができておらず、過剰在庫による管理コストの増加や、過少在庫による機会損失などが発生するケースがあります。
一方、サプライチェーンマネジメント導入後は、リアルタイムで在庫状況や需要予測を確認できるため、過剰在庫や過少在庫を防ぎ、常に在庫管理を最適化できるでしょう。管理コストの削減や機会損失の低下につながることから、自社の利益向上が期待できます。
サプライチェーンマネジメントを導入すると、環境に配慮した調達を実現できます。時代の潮流として、環境問題に向き合うことも企業経営に不可欠となっていますが、調達においては「グリーン調達」に取り組むことが重要です。グリーン調達とは、原材料や部品を調達する上で、環境負荷の少ないものを優先的に選択する取り組みのことです。
仮に、サプライチェーンマネジメントを導入していない場合は、仕入れ先を細かく比較することが難しく、グリーン調達の十分な成果を上げるのは困難でしょう。しかし、サプライチェーンマネジメントを導入すれば、仕入れ先の情報を一元的に管理できるようになるため、それぞれの仕入れ先の情報を比較検討しやすくなり、グリーン調達に適した資材を選定できます。
サプライチェーンマネジメントに取り組むメリットは大きいものの、企業が気を付けておかなければならないデメリットもあります。
サプライチェーンマネジメントの導入に向けて、これらのデメリットも確認しておきましょう。
企業が実際にサプライチェーンマネジメントを導入する際は、原材料の調達から出荷までの幅広いプロセスをまとめて管理しなければなりません。そのため、導入に向けた社内の協力体制の構築や、ルール策定には一定の時間や工数がかかります。
また、サプライチェーンマネジメントに関するノウハウがなく、適切な担当者がいない場合は、安定的な運用に向けて時間や工数が膨らむケースもあります。
対策としては、サポートが充実しているツールやサービスを選ぶことで、工数の発生を抑えられ、スムーズな導入を実現できるでしょう。
サプライチェーンマネジメントを導入するには、一定のコストがかかることもデメリットといえます。サプライチェーン全体を管理するためには、ツールやサービスの導入が不可欠であるとともに、各事業所や関連会社との連動も欠かせません。
ツールやサービスの導入においては、初期コストやランニングコストがかかります。場合によっては、各事業所や関連会社にも独自のツールを導入する必要があるでしょう。
とはいえ、競合他社との優位性を確保するためにも、サプライチェーンマネジメントの必要性は高いです。コストがかかるというデメリットのみに焦点を当てるのではなく、安定的な企業経営の実現に必要な経費として捉えることが大切です。
サプライチェーンマネジメントに取り組む上で、ツールやサービスの選定を誤った場合、導入効果を得にくくなるため注意が必要です。
たとえば、各拠点における間接材仕入れのシステム化を目的に「集中購買に特化したシステム」を導入した場合、データの一元管理は実現できる一方で、各拠点からの購買依頼が増加し、購買担当者が取りまとめて発注する手間が増える可能性があります。
このケースにおいては、カタログ購買ができる購買管理システムを導入することがおすすめです。各拠点から間接材を直に発注できるため、ラグがない発注ができるとともに、リアルタイムでのデータ管理も実現できます。当然ながら購買担当者の負担増にはつながらず、むしろデータの一元管理により業務の負担軽減につながるでしょう。
サプライチェーンマネジメントを導入する流れは以下のとおりです。
ここからは、サプライチェーンマネジメントを導入する流れを4つのステップで紹介します。
サプライチェーンマネジメントの導入に際して、まずは導入目的や課題を明確化させます。社内の関係者で洗い出した導入目的や課題を共有し、取り組む優先順位を付けましょう。
目的達成や課題解決においてサプライチェーンマネジメントが有効であれば、実際に導入を進めていきます。なお、現状と導入後に達成したい目標を数値化しておけば、定量的なチェックが可能となり、導入の進捗状況や効果を客観的にチェックできます。
次に、実際にサプライチェーンマネジメントを推進する部署や担当者の人員配置を決めます。メンバーのスキルや特性を見極めた上で、チームを牽引するリーダーなどの役割を割り当てることが大切です。
導入目的や課題をチームメンバーに漏れなく共有して理解を深めておくことで、サプライチェーンマネジメントに取り組む方向性を統一できます。
続いて、自社が掲げる目的や課題に適したサービス・ツールを選定します。その際、社内の体制に見合った機能を搭載しているか、サポート体制が充実しているかといった点をチェックすることが重要です。
サービス・ツールの具体例としては、調達購買に関するプロセスを一元管理して、業務効率化やDX化を推進できる購買管理システムなどが挙げられます。自社に必要なサービス・ツールを吟味して導入すれば、費用対効果を高められるでしょう。
自社の目的や課題に対応したサービス・ツールを導入し、サプライチェーンマネジメントを実施した後は、その効果を測定します。導入前後の違いを把握し、改善効果を可視化させるために、あらかじめ設定しておいた数値を活用しましょう。
効果測定して改善の余地がある場合は、次回の実行計画に反映させて改善を繰り返すことで、サプライチェーンマネジメントに取り組む効果を最大化できます。
サプライチェーンマネジメントを導入する際は、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
サプライチェーンマネジメントの導入には、これまで蓄積したデータを活用することが不可欠であるため、データの可視化が必要となります。
特にサプライヤーの管理データなどは、サプライチェーンマネジメントの導入において重要です。そこで、ユーザーカタログを使って独自の取引先をまとめて管理できる上に、調達工程のコスト削減・業務効率化を目指せるビズネットの「購買管理プラットフォーム」を導入するのも手です。
「購買管理プラットフォーム」には、以下のような特徴・メリットもあります。
「購買管理プラットフォーム」を自社のニーズに合わせて活用することで、サプライチェーンマネジメントの推進に役立てられるでしょう。
ビズネットの購買管理プラットフォームのサービス内容はこちらからご確認ください。
購買管理プラットフォーム(https://www2.biznet.co.jp/procurement/)
サプライチェーンマネジメントを実行する際、一部門のみが取り組んでもなかなか成果を得られません。部門横断的な組織の構築や、サプライチェーン上の関連企業への協力要請を行い、社内外の連携を強化することがポイントです。
特にサプライチェーンの上流であるサプライヤーとの連携を強めることは重要であるため、情報を共有するプラットフォームなどを整備し、早期の課題発見や改善に取り組む必要があります。
中長期的に安定したサプライチェーンを構築するには、サプライチェーンリスクに対する備えも不可欠です。サプライチェーンリスクとは、自然災害やサイバー攻撃などがサプライチェーンにもたらすリスクを指します。
これらのリスクに備えるにあたり、予防策や復旧策を策定する「BCP(事業継続計画)」の観点を盛り込むことで、事業を継続できる体制への整備が可能です。
サプライチェーンマネジメントの成功事例としてトヨタ自動車のケースを紹介します。同社の製造工程では、「ジャスト・イン・タイム(JIT)」という方式を採用しています。これは、「必要なものを、必要な時に、必要な量を生産する」という方式で、在庫量を最小限に抑えた生産活動が可能です。
ジャスト・イン・タイムの導入により、在庫の最適化や管理コストの削減、販売機会損失の防止につながるメリットがあります。さらに、同社では自然災害のサプライチェーンリスクに備えるため、サプライヤーの工場を近場に配置して密な連携を取ることで、万一の際の資材供給が遅れるリスクを低減しています。
サプライチェーンマネジメントに取り組むことで、「リードタイムを削減できる」「在庫の最適化を図れる」といったメリットがあります。導入に際しては、目的・課題の明確化や、自社に適したサービス・ツールの選定が重要です。
サプライチェーンマネジメントに取り組む際は、これまで14,000社以上の企業様に採用いただいたビズネットの「購買管理プラットフォーム」の導入をぜひご検討ください。
「購買管理プラットフォーム」を導入すれば、調達購買の一元管理が可能となり、在庫確認や請求処理の業務効率化によるコスト削減も目指せます。
導入・運用に向けた手厚いサポート体制が整っていますので、まずは自社の課題やお悩みをお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。
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