自社業務の内容・フローの見直しに向けて、BPR(業務改革)の実施を検討している方も多いのではないでしょうか。BPRは、業務プロセスの可視化や最適化、さらには意思決定のスピード向上につながる取り組みです。
この記事では、BPRの概要をわかりやすく解説し、BPRが注目されている理由や、推進するメリット・デメリットについて紹介します。さらに、BPRの促進につながる6つの手法や実行する流れ、BPRの成功事例なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
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BPRとは、「Business Process Re-engineering」の略称で、わかりやすくいうと「業務改革」のことです。具体的には、業務フローや業務内容、組織構造、情報システムなどを根本から見直し、再設計することを指します。
近年、社内の部門・部署の分業化や専門化が進み、結果として業務プロセスが分断されているケースが少なくありません。BPRは、こうした非効率な業務プロセスを見直し、最適化するための重要な取り組みです。
また、BPRは以下4つのキーワードで構成されていることに留意が必要です。以下の表より、それぞれのキーワードの概要を押さえておきましょう。
【BPRを構成するキーワード】
| キーワード | 概要 |
| 根本的 | 現行の業務プロセスの必要性や組織に対する貢献度などを疑問視し、根本的な確認・検証を行う |
| 抜本的 | 従来の慣習にとらわれず、不必要な業務を根本的に見直す |
| 劇的 | 変革につながるような大きな改善を図り、組織全体の業務効率化につなげる |
| プロセス | 従来のプロセスを見直し、効率化・品質向上を図る |
BPRは業務プロセスを抜本的に見直し、再構築する取り組みを指します。一方、業務改善とは、既存の業務プロセスに大きな変更を加えることなく、一部の業務に関わる人やモノの無駄を省いて効率化を図るものです。そのため、業務改善はBPRの一部ともいえるでしょう。
また、BPRは長期的な視点で取り組みますが、業務改善は短期的な視点で取り組むことにも違いがあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビッグデータやクラウドなどのデジタル技術を活用する取り組みです。業務プロセスの効率化だけではなく、組織や企業文化、サービスなどにも変革をもたらし、競合他社に対する優位性を確立することを目的としています。
BPRが業務プロセスの再構築に主眼を置いているのに対し、DXは企業全体の変革を目指す点に違いがあります。
なお、以下の記事では、製造業におけるDX化が進まないことを課題としている方向けに、その理由や成功事例を紹介しているので、ぜひご覧ください。
「製造業DXが進まない6つの理由を解説!DXの推進で得られるメリットや進める流れも紹介」
また、間接材購買のDX化を先延ばしするリスクや、DX化で得られる効果、具体的な方法などについて紹介した資料も用意しているので、ぜひ以下よりダウンロードしてご活用ください。
もともとBPRは1990年代初頭にアメリカで提唱され、その後日本でも導入が進められた取り組みです。バブル崩壊後における企業の経営立て直しとして注目を集めたものの、リストラの側面が強く印象付けられたため、成功事例は少ない状況でした。
しかし、昨今は少子高齢化による労働力の不足や、働き方改革の推進に伴い、BPRの注目度が高まっています。内閣府の資料によると、2024年における生産年齢人口(15~64歳人口)は7,373万人で、ピーク時の8,716万人(1995年)より1,343万人も減少しています。今後も減少を続け、2040年には6,213万人まで減少する見通しです。
こうした背景から、従来の業務プロセスのままでは、企業生産性の効率化や人的リソースの有効活用に取り組むことに限界があります。そのため業務プロセスを抜本的に見直し、再設計を図るBPRが注目を集めているのです。
次に、BPRを推進することでどのようなメリット・デメリットがあるのか確認していきましょう。
BPRを推進するメリットは、以下のとおりです。
BPRでは業務プロセスを抜本的に見直すため、可視化と最適化の機会が生まれます。業務プロセスの可視化と最適化により、属人的な業務を排除し、リスクマネジメントの強化に役立ちます。
また、業務プロセスの再設計により、意思決定が迅速化され、結果として顧客満足度や従業員満足度の向上につながる点も大きなメリットです。
BPRを推進する際は、以下のデメリットも考慮する必要があります。
業務プロセスを見直す際は、新規システムの導入や外部委託などを実行するため、一定のコストと工数が発生します。しかし、これらのコストと工数に関しては、企業の長期的な成長に向けた必要な投資と捉えることが重要です。
また、BPRによって従業員の反発を招くおそれがあります。これを避けるには、「現場の従業員の意見を積極的に取り入れる」「目的の理解を促す」といった対応が求められます。
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ここからは、BPRの促進につながる手法を6つ紹介します。自社で取り入れられる方法がないか、ぜひチェックしてみてください。
SCM(Supply Chain Management)は、製品の調達から生産、物流、販売までの一連の流れを最適化する手法です。関連部門を横断的に連携させ、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
たとえば、SCMを実施して在庫の最適化を行うことで、生産計画に基づいた資材の安定的な供給が可能となります。その結果、在庫不足による販売機会の損失や、余剰在庫による管理コストの増加といったリスクを回避できます。
製造業におけるSCMの詳細やメリット、導入時のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
「製造業のSCM(サプライチェーンマネジメント)とは?メリットや導入時のポイントを解説」
BPO(Business Process Outsourcing)とは、自社の特定の部門やビジネスプロセス全体を外部の企業に委託することを指します。BPOとアウトソーシングの違いは、業務範囲にあります。BPOは一連の業務プロセスを委託するのに対し、アウトソーシングは特定の業務のみを委託することが特徴です。
近年は、人材育成やマーケティングなど、BPOの業務領域が拡大している傾向にあります。BPOを活用すれば、業務効率化やサービス品質の向上、コスト削減といった効果も期待できるでしょう。
なお、調達・購買業務にBPOを導入するケースもありますが、企業によってはBPOよりも購買管理システムの導入が有効な場合があります。詳しくは下記の記事で解説しているので、ぜひご参照ください。
「調達・購買業務にBPOを導入するメリット・デメリットとは?BPOの概要についても解説」
ERP(Enterprise Resources Planning)とは、人・モノ・金・情報など企業経営の基本要素を適切に配分し、有効活用する考え方・計画のことです。近年は、企業の情報戦略に欠かせない「統合基幹情報システム」を指すことが多いです。
ERPシステムを導入すれば、部署間でのシステムやデータを一元管理し、業務効率化やスピーディーな経営判断につなげられるため、多くの企業が導入を進めています。
ERP導入のメリットや連携可能な購買管理システムの機能・選び方について、以下の記事で詳しく解説しています。
「ERPを導入するメリットや連携可能な購買管理システムの機能・選び方について解説」
シェアードサービスは、複数のグループ企業における財務・経理、総務・人事、情報システム、購買などの間接部門を集約し、業務効率化やコスト削減を目指す経営手法です。
シェアードサービスを導入することで、適正な人材配置やデータ活用を実現でき、コーポレートガバナンス強化の効果も期待できます。具体的な導入方法として、独立部門として設置する、あるいは子会社として独立させる方法などがあります。
業務仕分けは、BPRの初期段階で重要な作業です。業務の流れや部門間の連携を図式化して、業務フローを把握できるようにします。
それぞれの業務に優先順位を付け、より価値の高い業務にリソースを注ぐ一方で、重要度が低い業務についてはアウトソーシングするケースもあります。
シックスシグマとは、主に製造業で用いられる品質管理フレームワークで、統計学でデータのばらつきを示す標準偏差「σ(シグマ)」より命名されました。
このフレームワークを活用すれば、多様な部門における業務の品質改善と効率向上を目指せます。業務プロセスにおけるばらつきを分析することで、組織の課題解決などに活用されています。
BPRは5つのステップに沿って実行することが基本です。ステップごとの特徴を確認しましょう。
まずBPRの検討のステップでは、以下2つの設定を行います。
| 設定 | 概要 |
| 目的・目標の設定 | 階層の異なる従業員から改善すべきポイントをヒアリングし、企業戦略に沿った目的・目標へと調整する。 |
| 対象業務範囲の設定 | 対象とする業務の範囲と、業務のキープロセスを明確にする。業務システムを導入する際は、各業務で設計されるシステム区分「BSU(ビジネス・システム・ユニット)」を明確にする。 |
上記の設定を実施した上で、次のステップへと進みましょう。
2つ目のステップでは、既存の業務プロセスがもたらす課題を分析します。分析に役立つ代表的なフレームワークとして、以下が挙げられます。
| フレームワーク | 概要 |
| ABC(Activity Based Costing) | 活動(Activity)単位で業務プロセスを分類し、コストを算出するためのフレームワーク。それぞれの活動のコストを足すことで、全体的なコストを把握しやすくなる。 |
| BSC(Balanced Scored Card) | 現状を評価するスコアカードを「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と育成」の4つの観点で作成するフレームワーク。多角的な視点から業績を評価できるため、バランスの取れた改善・管理につなげられる。 |
3つ目の設計のステップでは、戦略・方針の策定や実施方法を決めるため、直接的に成果や利益を生まないノンコア業務の外注を検討しましょう。
また、ビジネスプロセスの設計においては、メンバー構成や投資額に対するコストの整備も重要です。社内で共通認識を持ちながら進めることで、スムーズな設計が可能になります。
続いて、BPRの必要性と目的を従業員と共有し、方針がずれていないことを随時確認しながら、実施を進めていきましょう。ビジネスプロセスの変革には、多くの時間を要するため、短期的な目標も設定し、段階的に推進することが重要です。
具体的にはマイルストーン方式を採用し、「方針に沿っているか」「目的に合っているか」を都度確認することをおすすめします。
最後のステップでは、見直した業務プロセスに問題がないか、どのような問題があるのかをモニタリングします。定期的にデータを収集・分析することで、業務の進捗を客観的に確認できるでしょう。
また、事前に設定した評価基準を用いて、BPRの効果測定と達成度の評価を行います。達成度に問題があれば、修正するために「検討」のステップから見直していくことが大切です。
BPRを推進する際の注意点は以下のとおりです。
BPRの効果を高めるためにも、明確なビジョンや方針を組織全体で共有し、従業員からの理解と協力を得ながら推進することが不可欠です。そうすることで、BPRの手段が目的化することの回避にもつながります。
また、上層部の決定事項に沿って従業員を動かす「トップダウン方式」と、現場から吸い上げた意見を意思決定に反映させる「ボトムアップ方式」を組み合わせることも重要です。従業員の意見も尊重しつつ、BPRとしての当初の目的達成に向けた効果的なアプローチを探る必要があります。
加えて、BPRの成果を数値化した上で定量的に評価することで、目的の達成度合いを正確に把握でき、改善案にも活かせます。
購買管理システムの導入によってBPRに成功した事例として、東京電力パワーグリッド株式会社様のケースを紹介します。同社では、電設材料購買の発注時におけるアナログ業務や、検収・支払い処理時の自社システムへの手入力作業などに、工数が多くかかることを課題としていました。
そこで、ビズネットの購買管理システム「購買管理プラットフォーム」のユーザーカタログ機能を活用し、EC未対応の取引先の商品も購買管理プラットフォーム上で商品の検索から発注までを行えるようにプロセスを変更しました。
また、自社システムとの連携により、検収・会計データの取込みなども最適化した結果、購買1件あたりの作業時間を3分の1に削減することに成功しています。
企業のBPRの促進につながる手法として、SCMやBPO、ERPなどが挙げられます。BPRを実行する流れや注意点を踏まえた上で、自社に適切な手法を取り入れるとよいでしょう。
SCM改革によってBPRを促進したいという方は、すでに14,000社以上の企業様にご利用いただいているビズネットの「購買管理プラットフォーム」の導入をご検討ください。自社のルールに合わせた運用・承認設定などを行えるほか、サプライヤー商品のディスカウント価格での購入や、最安値商品のワンクリック検索が可能なため、間接材購買の改善に役立てられます。
導入・運用をワンストップでサポートする体制が整っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。
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