自社の業務フローなどを見直すために、BPRの実施を検討している企業も多いでしょう。BPRは、業務プロセスの可視化や最適化、さらには意思決定のスピード向上に向けて重要な取り組みです。
今回は、BPRの概要をわかりやすく解説し、BPRの注目度が高まっている背景やメリット・デメリットについても紹介します。さらに、BPRを促進する手法や実行プロセスについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
BPRとは、「Business Process Re-engineering」の略称で、業務フローや業務内容、組織構造、情報システムなどを根本から見直し、再設計することを指します。
近年、社内の部門・部署の分業化や専門化が進み、その結果として業務プロセスが分断されているケースが少なくありません。BPRは、こうした非効率な業務プロセスを見直し、最適化するための重要な取り組みです。
BPRの取り組みでは、4つの重要なキーワードがあります。以下の表より、それぞれのキーワードの概要を押さえておきましょう。
キーワード | 概要 |
根本的 | 現行の業務プロセスの必要性や組織に対する貢献度などを疑問視して、根本的な確認・検証を行うためのキーワード |
抜本的 | 従来の慣習にとらわれることなく、不必要な業務を根本的に見直すためのキーワード |
劇的 | 変革につながるような大きな改善を図り、組織全体の業務効率化につなげるためのキーワード |
プロセス | 従来のプロセスを見直して、効率化・品質向上を図るためのキーワード |
BPRは他の用語と混同されやすいため、ここでは意味の違いを明確に確認しておきましょう。
BPRは業務プロセスを抜本的に見直して、再構築する取り組みを指します。一方、業務改善は、既存の業務プロセスに大きな変更を加えることなく、一部の業務に関わる人やモノの無駄を省いて効率化を図るものです。そのため、業務改善はBPRの一部ともいえるでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ビッグデータやクラウドなどのデジタル技術を活用することを指す用語です。業務プロセスの効率化だけではなく、組織や企業文化、サービスなどにも変革をもたらし、競合他社に対する優位性を確立することが目的です。
BPRが業務プロセスの再構築を中心とするのに対し、DXは企業全体の変革を目指す点に違いがあります。
なお、「DXが思うように進まない」と課題に掲げている製造業者は、その理由や成功事例について下記の記事より詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
「製造業DXが進まない3つの理由を解説!成功事例やメリット、具体的な進め方も」
また、間接材購買のDX化を先延ばしするリスクや、DX化で得られる効果、具体的な方法などについて紹介した資料も用意しているので、ぜひ以下よりダウンロードしてご活用ください。
BPRの注目度が高まっている背景として、少子高齢化で労働力が不足していることや、働き方改革が推進されていることが挙げられます。内閣府の資料によると、2023年における生産年齢人口(15~64歳人口)は7,395万人で、ピーク時の8,716万人より1,321万人も減少しています。今後も減少を続け、2040年には6,213万人まで減少する見通しです。
この現状から、従来の業務プロセスのままでは、企業生産性の効率化や人的リソースの有効活用に限界があります。そのため業業務プロセスを抜本的に見直し、再設計を図るBPRの必要性が今後も高まっていくでしょう。
次に、BPRを推進するメリット・デメリットについて見ていきましょう。
BPRを推進するメリットは、以下のとおりです。
BPRでは業務プロセスを抜本的に見直すため、可視化と最適化の機会が生まれます。また、プロセスの再設計により、意思決定が迅速化され、結果として顧客満足度や従業員満足度の向上につながる点も大きなメリットです。
一方、BPRを推進する際には、以下のデメリットも考慮する必要があります。
業務プロセスの見直しには、一定のコストと工数が発生します。しかし、これを企業 の長期的な成長に向けた必要な投資と捉えることが重要です。
また、BPRによって従業員の反発を避けるには、「現場の従業員の意見を積極的に取り入れる」「目的の理解を促す」といった対応が求められます。
続いて、BPRの促進につながる手法を4つ紹介します。BPRをスムーズに実行するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
SCM(Supply Chain Management)は、製品の調達から生産、物流、販売までの一連の流れを最適化する手法です。関連部門を横断的に連携させ、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
たとえば、SCMを実施して在庫の最適化を行うことで、生産計画に基づいた資材の安定的な供給が可能となります。その結果、在庫不足による販売機会の損失や、余剰在庫による管理コストの増加といったリスクを回避できます。
製造業におけるSCMの詳細やメリット、導入時のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
「製造業のSCM(サプライチェーンマネジメント)とは?メリットや導入時のポイントを解説」
BPO(Business Process Outsourcing)とは、自社の特定の部門やビジネスプロセス全体を外部の企業に委託することを指します。近年は、人材育成やマーケティングなど、 BPOの業務領域が拡大している傾向です。
BPOとアウトソーシングの違いは、業務範囲にあります。BPOは一連の業務プロセスを委託するのに対し、アウトソーシングは特定の業務のみを委託することが特徴です。
なお、調達・購買業務にBPOを導入するケースもありますが、企業によってはBPOよりも購買管理システムの導入が有効な場合があります。詳しくは下記の記事で解説しているので、ぜひご参照ください。
「調達・購買業務にBPOを導入するメリット・デメリットとは?BPOの概要についても解説」
経済評論家の中には、「BPRのないBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は成功しない」と言い切る声もあがっています。これは、BPRで業務上の無駄を省いてからBPOを実施することで、コスト削減や業務効率化が大きく期待できるためです。
たとえば、ある企業では、アウトソーシング先企業(アウトソーサー)のシステムやサービスを利用して自動化し、購買の中間プロセスを削減しました。その結果、年間1億円に近い人件費コストの削減し、さらには業務効率化とサービスの品質向上を実現しています。
BPR(ビジネスプロセス改革)を検討する際は、現状の業務フローに固執せず、目的を達成するための最適な方法を追求し、思い切ってプロセスの簡略化を行うことが重要です。大胆な取り組みであるほど、大きな効果を期待できるのはいうまでもありません。
そのため、BPOとBPRをセットで考えることが成功の鍵となります。
ERP(Enterprise Resources Planning)とは、人・モノ・金・情報など企業経営の基本要素を適切に配分し、有効活用する考え方のことです。近年は、企業の情報戦略に欠かせない「統合基幹情報システム」を指すケースが多い傾向です。
ERPシステムを導入することで、部署間でのシステムやデータを一元管理できるため、多くの企業が導入を進めています。
シェアードサービスは、複数のグループ企業における財務・経理、総務・人事、情報システム、購買などの間接部門を集約し、業務効率化やコスト削減を目指す経営手法です。
シェアードサービスを導入することで、適正な人材配置やデータ活用を実現でき、コーポレートガバナンス強化の効果も期待できます。
ここでは、PRを実行する流れについて、5つのステップに分けて紹介します。
まずBPRの検討のステップでは、以下2つの設定を行います。
設定 | 概要 |
目的・目標の設定 | 階層の異なる従業員から改善すべきポイントをヒアリングし、企業戦略に沿った目的・目標へと調整する |
対象業務範囲の設定 | 対象とする業務の範囲と、業務のキープロセスを明確にする |
上記の設定を実施したうえで、次のステップへと進みましょう。
2つ目のステップでは、既存の業務プロセスがもたらす課題を分析します。代表的な分析フレームワークとして、以下が挙げられます。
フレームワーク | 概要 |
ABC(Activity Based Costing) | 活動(Activity)単位で業務プロセスを分類し、コストを算出するためのフレームワーク。それぞれの活動のコストを足すことで、全体的なコストを把握しやすくなる。 |
BSC(Balanced Scored Card) | 現状を評価するスコアカードを「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と育成」の4つの観点で作成するフレームワーク。多角的な視点から業績を評価できるため、バランスの取れた改善・管理につなげられる。 |
3つ目の設計のステップでは、戦略・方針の策定や実施方法を決めるため、直接的に成果や利益を生まないノンコア業務の外注を検討しましょう。
また、ビジネスプロセスの設計においては、メンバー構成や投資額に対するコストの整備も重要です。
続いて、BPRの必要性と目的を従業員と共有し、方針がずれていないことを随時確認しながら、実施を進めていきましょう。ビジネスプロセスの変革には、多くの時間を要するため、短期的な目標も設定し、段階的に推進することが重要です。
最後のステップでは、見直した業務プロセスに問題がないか、どのような問題があるのかをモニタリングします。定期的にデータを収集・分析することで、業務の進捗を客観的に確認できるでしょう。
また、事前に設定した評価基準を用いて、BPRの効果測定と達成度の評価を行います。達成度に問題があれば、修正するために「検討」のステップから見直していくことが大切です。
業務フローや業務内容を根本的に見直すBPRは、業務プロセスの可視化・最適化、そして顧客満足度・従業員満足度の向上を目指すために重要です。BPRの促進につながる手法や、BPRを実行する流れを把握したうえで取り組むと良いでしょう。
なお、BPRの手法の一つとして「SCM」を紹介しましたが、上流工程である購買業務を見直すことも重要です。購買業務の一元管理を実現するシステムとして、ぜひビズネットの「購買管理プラットフォーム」の導入をご検討ください。
ITトレンドの購買システム部門で年間ランキング1位を獲得した「購買管理プラットフォーム」は、以下のような特徴を持つSaaS型システムです。
自社の課題をヒアリングしたうえでの最適なプランのご提案ができるほか、導入・運用に向けたサポート体制も万全ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。
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