企業運営の安定性を高めるために、製造業の利益率の目安について知りたいという方も多いのではないでしょうか。利益率の目安を知れば、平均と比べた自社の現状把握などに役立てることが可能です。
この記事では、製造業の利益率の目安を紹介した上で、種類別の計算方法や利益率が上がらない理由を解説します。併せて製造業の利益率をアップさせる3つのポイントや、利益率アップに役立つシステムについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
財務省の「年次別法人企業統計調査(令和5年度)」によると、2023年度における製造業の利益率は以下のとおりです。
売上高営業利益率 | 5.1% |
売上高経常利益率 | 8.6% |
売上高営業利益率とは、売上高のうち「営業利益」が占める割合のことを指します。一方の売上高経常利益率とは、売上高のうち「経常利益」が占める割合を指すことが特徴です。
製造業の利益率は、2019年度からの5年間で以下のように推移しています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
売上高営業利益率 | 3.5% | 3.1% | 5.2% | 4.5% | 5.1% |
売上高経常利益率 | 5.7% | 6.0% | 8.3% | 7.9% | 8.6% |
上表のとおり、製造業における売上高営業利益率と売上高経常利益率の推移を見ると、上下はあるものの、2019年度よりも2023年度のほうが利益率は高い結果となっています。
なお、営業利益率でいうと、0~5%は一般的、5~15%は経営状態がとても優れているとされています。ただし、営業利益率が10%を超える企業は少ない傾向にあります。
参考:財務省「報道発表 年次別法人企業統計調査(令和5年度)」
財務省の資料をもとに、2023年度における製造業の業種別の利益率を紹介します。
売上高営業利益率 | 売上高経常利益率 | |
食料品 | 3.1% | 4.7% |
化学 | 7.8% | 12.1% |
石油・石炭 | 2.2% | 2.7% |
鉄鋼 | 5.1% | 7.0% |
金属製品 | 3.9% | 6.2% |
はん用機械 | 7.3% | 11.8% |
生産用機械 | 7.1% | 10.5% |
業務用機械 | 7.0% | 13.5% |
電気機械 | 4.1% | 8.8% |
情報通信機械 | 4.3% | 6.6% |
輸送用機械 | 5.5% | 11.3% |
参考:財務省「報道発表 年次別法人企業統計調査(令和5年度)」
上表のとおり、製造業の中で売上高営業利益率が最も高いのは7.8%の「化学」、次いで7.3%の「はん用機械」という結果です。一方、売上高経常利益率が最も高いのは13.5%の「業務用機械」、次いで12.1%の「化学」という結果になっています。
次に、製造業の利益率を求めるために、利益率の種類別の計算方法を紹介します。
売上高総利益率とは、企業の売上高に対する「売上総利益」の割合を示すもので、粗利益率とも呼ばれます。商品・サービスの利益の規模感を把握したいときに利用できますが、景気の影響を受けやすいことに留意が必要です。
製造業では、売上高から製造原価を差し引いて「売上総利益」を求めた上で、以下の計算式を用います。
【売上高総利益率の計算式】
売上総利益÷売上高×100=売上高総利益率
売上高営業利益率とは、企業の主力事業がもたらした収益性を示す指標で、粗利益率と比べると、利益率の対象範囲が広がることが特徴です。
また、支払利息を控除する前の利益率であり、財務活動の影響を受けないため、純粋な事業の収益性のみを把握できることもポイントです。
計算する際は、売上総利益から販売費や人件費、広告費などを差し引いた「営業利益」を求めた上で、以下の式を用います。
【売上高営業利益率の計算式】
営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率
売上高経常利益率とは、企業の売上高に対する経常利益の割合を示す指標です。経常利益には、主力事業であるか否かに関わらず、企業全体の事業活動で得た利益が含まれることがポイントです。
計算する際は、営業利益から営業外損益(本業以外の活動で生じた損益)を差し引いて「経常利益」を求めた上で、以下の式を用います。
【売上高経常利益率の計算式】
経常利益÷売上高×100=売上高経常利益率
自己資本経常利益率とは、企業の自己資本によって生み出された純利益の割合を示す指標で、「ROE(return on equity)」とも呼ばれます。
自己資本の運用効率を把握するときに役立つもので、投資家が企業の業績を調べるために利用することが多い傾向にあります。
計算する際は、経常利益から特別損益法人税などを差し引いて「当期純利益(事業年度の最終的な利益)」を求めた上で、以下の式を用います。
【自己資本経常利益率の計算式】
当期純利益÷自己資本×100=自己資本経常利益率
総資産利益率とは、企業の総資産によって生み出された利益の割合を示す指標で、「ROA(return on asset)」とも呼ばれます。
企業の総資産を把握するために使われており、企業規模や財務構成が異なる同業他社と自社の業績を比べる際にも活用できます。計算式は以下のとおりです。
【総資産利益率の計算式】
当期純利益÷総資産(総資本)×100=総資産利益率
製造業の利益率が上がらない理由として、大きく2つが挙げられます。
製造業で業務が効率化されておらず、生産性が低い状態に陥っていると、利益率も上がりづらい傾向にあります。業務における作業時間の短縮や、不良・ロスの削減に取り組むことで生産性の向上を図れます。
製造業の生産性を改善する上では、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」を意識することが不可欠です。また、各部門の連携体制の確立や、現場の情報収集・分析なども重要となります。
QCDの概要や目標達成に必要な管理手法を知りたい方は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
「QCDとは?目標達成に必要な管理手法や成功させるコツを紹介」
製造業における原材料費・人件費のコスト負担が増していると、利益率にも影響を及ぼします。近年は、これらのコスト増加を課題としながらも、取引への影響を危惧し、価格転嫁などの対策を取れていない企業が多いです。
たとえば、原材料費のコスト負担を減らす対策としては、相見積もりの実施や、ボリュームディスカウントの交渉によって、コストダウンを図ることが挙げられます。
製造業の利益率をアップさせるポイントとして、以下の3つが挙げられます。
具体的なポイントを詳しく確認していきましょう。
製造業では、原材料費や人件費などさまざまなコストがかかるため、これらを最適化することで利益率の向上が見込まれます。とはいえ、原材料などを含む「直接材」に関しては、すでに改善策を実施しているケースが少なくありません。
また、人件費の削減は、生産性の低下や離職率の上昇といったリスクがあることに留意が必要です。そこで、消耗品や工具などを含む「間接材」の購買コストを見直すことに、目を向けてみるのも一つの方法です。
間接材は、品目の多さや関与する部門の多さを理由に、購買管理を最適化できていない企業が多い傾向にあります。具体的な改善策として、取引するサプライヤーや品目の一元的な管理、間接材購買ルールの標準化などが挙げられます。
間接材の概要や調達における課題、コスト削減方法については、以下の記事をご参照ください。
「間接材とは?直接材との違いや調達における課題・コスト削減方法を紹介」
なお、ビズネットでは購買管理のコスト削減に関する動画セミナーを、無料でご提供しています。インターネット環境があれば、いつでもご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。
製造業の利益率をアップさせるには、業務の生産性を上げて効率化を図ることが有効です。近年は、IT技術を活用することで生産性を上げ、業務効率化を実現させる企業も多くあります。
たとえば、購買管理を一元的に管理できるシステムを導入した場合、サプライヤー商品の選定や承認ワークフローなどを効率化でき、人的コストの削減も可能になります。
また、自社のホームページにチャットボットを導入することによる問い合わせ対応の効率化や、PC作業を自動化できる「RPAツール」の導入による人的ミスの防止といった方法もあります。
自社が製造して市場に提供する製品の付加価値を高めることにより、販売価格を引き上げられる可能性があります。付加価値の具体例として、以下が挙げられます。
顧客の購買意欲を損なわないように、市場分析や顧客ニーズの把握をしっかりと行い、これらの対策を検討することが重要です。
前述のとおり、間接材の購買管理を最適化できておらず、コストダウンの改善余地があるという企業は多く存在します。そういった企業には、間接材購買の一元管理が可能なシステム「購買管理プラットフォーム」の利用をぜひご検討ください。
「購買管理プラットフォーム」は、30社を超えるサプライヤーと連携し、5,000万品目以上のアイテムを取り扱っているクラウド型の購買管理システムです。
導入すれば、間接材購買の生産性がアップすることで、業務効率化を実現できます。実際の導入事例として、購買業務を3分の1まで削減できたというケースもあります。
また、サプライヤー商品を会員様向けのディスカウント価格で購入できる上、最安値商品を横断的にワンクリックで検索できるので、購買コストダウンも目指せるでしょう。加えて、自社のルールに合わせて、運用設定や承認設定などを行えるため、業務効率化を図れることもポイントです。
導入にかかる費用は基本無料なので、まずはお気軽にご相談ください。
一口に製造業の利益率といっても、売上高総利益率(粗利益率)や売上高営業利益率などの種類があるので、自社が算出したい内容に合わせて適切な計算式を利用しましょう。また、製造業において利益率をアップさせるには、コストの最適化や業務効率化などを図ることが重要です。
製造業の購買業務における生産性を向上させ、業務効率化を実現したいという方は、ビズネットの「購買管理プラットフォーム」の利用をご検討ください。購買業務をシステム上で一元的に管理できるので、業務工数や手間の削減を目指せます。導入・運用に向けて、手厚いサポート体制が整っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。
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