環境問題や人権問題に対する社会的関心が高まっている中で、企業がCSR調達に取り組む重要性が増しています。CSR調達を実行して社会的責任を果たすことで、企業活動の安定性も高まるでしょう。
今回は、CSR調達とは何かを解説したうえで、企業がCSR調達に取り組む目的や実際の流れを紹介します。併せて企業がCSR調達に取り組んでいる事例についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
そもそもCSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」という意味を持ちます。つまり、CSR調達とは、資材の品質・性能・価格などの基本的な要素に「環境」「労働環境」「人権」を加えて、CSR側面にも配慮した調達を行うことです。
CSR調達の重要性が増している理由として、サプライチェーンのグローバル化によって生じる環境問題が挙げられます。海外には環境規制の緩い国や地域もあるため、そのような調達先から原材料や部品を調達すれば、排出物による環境汚染のリスクを生じかねません。
環境汚染のリスクを回避するためには、サプライチェーン上の企業が一丸となってCSRに取り組むことが重要です。環境問題の解消を推進することにより、企業としての社会的な責任も果たせるでしょう。
なお、調達業務について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
調達業務とは?基本的な業務内容や必要スキル、業務効率化する方法について解説
CSR調達とSDGsは、どちらも企業の社会的責任に関わる重要な取り組みですが、目的に違いがあります。
CSRの目的は、企業が消費者や従業員から信頼を得ることです。一方で、SDGsの目的は、地球規模で持続可能な社会の実現を目指すことです。
SDGsでは、国際社会が進むべき方向を示した「17のゴール(目標)」と、数値目標を含む「169のターゲット」が設定されており、2030年までの達成が目指されています。
なお、SDGsの注目度が高まっている背景としては、異常気象の増加・地球温暖化に対して世界全体で危機感が増していることや、企業の経営・マーケティングの観点から企業が取り組む必要性が高いことが挙げられます。
グリーン調達とは、環境負荷の少ない製品・サービスの仕入れや、環境配慮に積極的な企業からの調達を重視する調達方法です。一方、CSR調達は、自然環境だけでなく雇用条件や労働環境なども考慮した調達である点に違いがあります。
グリーン調達に取り組むことは、ステークホルダーからの信頼の獲得や、生産活動上のリスクの回避といったメリットが見込まれます。
次に、企業がCSR調達に取り組む目的を見ていきましょう。
CSR調達の目的の1つは、リスクを事前に洗い出し、調達におけるリスクを低減することです。もし、資材の調達先が環境や人権、社会貢献などの観点で不適切な対応をしていると、自社の製品・サービスの販売にも悪影響を及ぼす可能性があります。
CSR調達に取り組むことで、企業価値毀損のリスクを回避しながら、長期的な関係を築ける調達先を見つけられるでしょう。特に近年は、企業の生産活動において、人権尊重に関する取り組みの必要性が増しています。2022年9月には、日本政府によって「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されるなど、人権尊重の気運は高まっています。
自社の事業と紐付けられたCSR調達を実践することで、ステークホルダーや企業に対するブランディングが可能になります。具体例として、CSR調達の方針を自社の公式サイトで公開する企業も増えつつあります。
CSR調達に積極的に取り組んでいることを対外的に宣伝し、ブランドイメージが向上することで、新規顧客の開拓など新たなビジネスチャンスの創出にもつながるでしょう。ただし、CSR調達に取り組むためにはリソースを割く必要があるので、現場作業の効率化・省略化に向けた見直しも不可欠となります。
CSR調達は、以下5つのステップで取り組むことが可能です。
各ステップについて詳しく見ていきましょう。
1つ目のステップでは、CSR調達における自社の目標を決めます。中長期・短期それぞれの目標例として以下が挙げられます。
上記のように、中長期目標では最終的なビジョン、短期目標では具体的なアクションプランを決めることで、組織全体が一体となってCSR調達に取り組めるようになります。
2つ目のステップでは、調達における自社の基準を決めていきます。
企業が設ける一般的な「項目」と「基準」の例は、以下のとおりです。
項目 | 設定する基準 |
コンプライアンス | 法令遵守、競争法遵守、知的財産権の尊重など |
人権・労働 | 人権尊重、適切な賃金の支払いなど |
環境 | 環境マネジメントシステムの構築、資源保護、環境負荷物質の削減など |
品質・安全 | 品質マネジメントシステムの構築、品質・安全追求など |
情報セキュリティ | 情報セキュリティ強化、機密情報管理の徹底など |
事業継続管理 | 事業継続計画策定、事業継続管理構築など |
社会貢献 | 社会課題解決など |
3つ目のステップでは、これまで設定した目標と自社基準に基づき、具体的なCSR調達の実施計画を作成していきます。たとえば、短期の目標に対する計画を作成する場合、取引先企業への状況確認や、評価・指導・サポートに関する具体的な計画を立てます。
一方、中長期の目標達成に向けた計画を作成する場合は、環境負荷を抑えたサプライチェーンを構築するなど、大局的な視点で目標を設定しましょう。目標の性質に合った実施計画を策定することがポイントです。
4つ目のステップでは、CSR調達の実施計画を策定後、第三者目線で客観的なチェックを行います。自社の慣習に沿って策定した実施計画の内容が、近年のコンプライアンスに照らし合わせると適切なものではないケースもあるためです。
CSR調達の実施計画を確認する際は、「自社の企業理念や事業内容と乖離していないか」「発注先相互の公平性が保たれているか」というポイントを押さえておきましょう。
最後に、ステップ4までに決定した内容を整理して、「CSR調達ガイドライン」を作成しましょう。CSR調達ガイドラインとは、企業が社会的責任を果たすための取り組み事項をまとめたものを指します。
CSR調達ガイドラインを社外に発表したうえで、計画に沿ってCSR調達を実行していきます。なお、CSR調達ガイドラインは社内外の関係者の意見を取り入れながら、定期的に見直すことが大切です。
ここでは、企業がCSR調達に取り組んでいる事例として、製造業と建設業の事例を紹介します。
株式会社ニッスイ様では、CSR行動宣言を踏まえた「ニッスイグループ調達基本方針」として、以下5つの基本方針を策定しています。
また、同社ではCSR調達の推進に向けて、「ニッスイCSR購買取り組みセルフチェックシート」をはじめとした計3つのチェックシートを活用し、現状把握や改善に努めています。併せて、国内サプライヤーに対する「CSR調達説明会」の開催や、持続可能なパーム油の調達を行うなど、CSR調達に精力的に取り組んでいることが特徴です。
大林グループでは、CSR調達活動の基本方針として、以下を制定しています。
また、同社ではCSR調達の推進をグループ全体に浸透させるため、毎年研修を実施しています。その他、CSR調達ガイドラインに関するアンケートを行い、CSR調達の推進を目的とした意見交換に活かすなど、全社的に取り組んでいます。
CSR調達の実現に向けて、ビズネットの「購買管理プラットフォーム」の導入を検討することも1つの方法です。「購買管理プラットフォーム」は、以下のような特徴を持つ購買管理システムです。
その他にも、「最安値商品を横断的にワンクリックで検索できる」「複数の発注に関する請求を1つに取りまとめて請求できる」など、調達業務を効率化できる機能を多数搭載しています。CSR調達を実現するうえで、「購買管理プラットフォーム」は有効に活用できるでしょう。
CSR調達に取り組むことで、調達におけるリスクの低減や、ブランディングによるビジネスチャンスの創出など、多くのメリットが得られます。CSR調達に取り組む際は、5つあるステップごとのポイントを意識しつつ、自社のニーズに適した目標・実施計画の策定を行いましょう。
ビズネットの「購買管理プラットフォーム」は、CSR調達の実現に向けて有効なツールです。購買情報の可視化による全社ガバナンスの強化や、自社ルールに合わせた運用・承認設定を行えるので、CSR調達をスムーズに実行しやすくなるでしょう。
導入・運用に向けたサポート体制も充実していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。
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