CSR監査は、企業のサステナビリティやコンプライアンス対応を強化する上で、重要な役割を果たしています。特に近年では、サプライチェーン全体でのCSR監査が注目されており、法令遵守だけでなく、企業の社会的責任を客観的に示す手段として活用されています。
この記事では、CSR監査の概要やISO審査との違い、実施プロセスをわかりやすく解説します。
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まずは、そもそもCSR監査とは何か、概要や注目される背景、ISO審査との違いについて見ていきましょう。
そもそもCSR(企業の社会的責任)とは、企業が利益追求だけでなく、社会や環境への配慮を含めた責任を果たすべきという考え方です。近年では、「人権尊重」「環境保護」「倫理的取引」などの観点を含むCSRが、企業価値を評価する重要な基準とされています。
CSR監査とは、CSR(企業の社会的責任)に関わる取り組みが、適切に実施されているかどうかを客観的に確認・評価する監査のことです。サプライヤー監査とも呼ばれており、サプライヤー企業に対して労働環境、安全衛生、環境保護、倫理遵守などの観点から法令違反や不適切な対応がないかをチェックします。
監査では、就業規則や労働契約書、従業員の労働時間記録、環境負荷に関するデータなど、さまざまな資料が確認対象となります。さらに、工場などの現場を訪問し、従業員へのインタビューや現地の観察を通じて、実態との乖離がないかを確認することも監査内容の一つです。
CSR監査が注目されるようになった背景には、いくつかの大きな社会的要因があります。まず、地球規模での気候変動への対応や人権問題への関心の高まりが挙げられます。こうした中で、サステナビリティやESG(環境・社会・ガバナンス)投資が加速し、企業に対する社会的責任の透明性が強く求められるようになりました。
特にグローバルに事業を展開する企業では、サプライチェーン上の一部の不祥事によって全体の信用が大きく損なわれるリスクがあります。そのため、単に自社のコンプライアンスを守るだけでなく、取引先や仕入先まで含めた責任ある調達が求められているのです。
また、消費者の「倫理的消費(エシカル消費)」への関心も高まっており、企業が環境や人権に配慮した取り組みを行っているかどうかは、購買行動にも大きな影響を与える要素となっています。CSR監査は、こうした社会的要請に応える手段として、有効なアプローチといえるでしょう。
なお、CSR調達に関する内容は以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
「CSR調達とは?企業が取り組む目的・流れや成功事例も紹介」
一見、ISO審査とCSR監査は似ているように見えますが、目的や実施主体、対象範囲などに明確な違いがあります。
以下はCSR監査とISO審査の主な違いです。
| 比較項目 | CSR監査 | ISO審査 |
| 対象 | サプライヤー(取引先企業) | 自社(もしくは自社が認証を希望する組織) |
| 実施の目的 | 社会的責任の履行状況を客観的に評価 | 規格に基づいた業務プロセスの整備と認証取得 |
| 実施主体 | 取引先企業や外部の依頼元が実施することが多い | 自社が自発的に申請し、認証機関が審査 |
| 監査範囲 | 労働環境、倫理、環境、サステナビリティなど | 品質管理、環境マネジメントなどの特定領域 |
| 法的拘束力 | 原則なし(契約で義務付けられる場合もある) | 原則なし(業界慣行や取引条件になることあり) |
このように、CSR監査は取引上の信頼構築やリスク管理の手段であり、外部からの要請で実施されるケースが多いという点が、ISO審査との大きな違いといえます。
CSR監査の実施には、企業にとって多くのメリットがあります。
まず、法令違反の早期発見やコンプライアンスの徹底により、リスクの最小化が図れます。特に労働問題や環境問題は、社会的非難の対象となりやすく、企業イメージの悪化や取引停止など深刻な影響をもたらしかねません。
また、CSR監査を通じて企業の透明性や信頼性が高まることで、投資家や顧客からの評価向上にもつながります。これは、長期的な経営の安定や持続可能な成長にも寄与する重要な要素といえます。
特に調達や購買部門は外部との接点が多いため、CSR監査を通じてサプライヤーとの信頼関係を築き、企業価値を高める取り組みが求められます。これは単なる監査業務にとどまらず、戦略的な調達活動の一環ともいえるでしょう。
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CSR監査を実施する際は、計画から改善までの一連の流れを適切に踏むことで、より効果的に機能します。
ここでは、「準備」「実施」「報告と改善」の3ステップに分けて具体的な進め方を解説します。
まずは、CSR監査の目的と評価基準を明確にすることが大切です。「どのようなリスクを防ぎたいのか」「どの領域を重点的に確認したいのか」といった視点で、監査のゴールを具体的に設定します。次に、社内外の関係者を含めた監査体制を構築しましょう。CSRや調達部門からの担当者を選任し、必要に応じて外部監査機関や有資格者を活用します。
また、サプライヤーには事前調査票(自己診断)や必要書類を送付しておくことで、現地訪問時の効率が向上します。併せて、スケジュールの調整、訪問先との連絡、チェックリストの作成などもこの段階で行います。
監査当日は、最初に現地で監査の目的と流れを相手先に丁寧に説明し、信頼関係を築くことが大切です。
その後、現場の視察、関係資料や記録の確認、従業員インタビューなどを通じて、実態を多面的に把握します。たとえば、労働時間管理台帳や安全教育記録などが確認対象になります。
ポイントは、実測値や写真・映像などの「客観的証拠」を確保することです。これにより指摘内容の説得力が増し、相手先の納得感も高まります。また、必要に応じて、監査中の状況を記録し、後日の検証材料とすることも効果的です。
監査が終了したら、結果をまとめた報告書を作成します。報告書には、良好な点と改善が必要な点の両方を明記し、改善提案や今後の方向性を含めて記述します。
さらに、報告内容に基づいて改善アクションプランを立案し、サプライヤーに実行してもらう必要があります。重要なのは、「指摘して終わり」ではなく、改善状況を追跡・確認するフォローアップ体制を整えることです。
定期的な再監査や進捗報告を要求することで、CSR監査を単なるチェックではなく、改善と成長の機会にできるでしょう。
CSR監査を効果的に機能させるためには、単に形式的に実施するのではなく、組織全体での理解・協力体制と、専門的な視点に基づいた進行が不可欠です。
ここでは、実施時に特に留意すべき3つのポイントを紹介します。
CSR監査は、CSR部門だけで完結できるものではありません。労務管理、購買、総務、さらには経営企画など、複数の部署にまたがるテーマであるため、社内全体の協力体制が必要です。
そのため、まずは経営層に対してCSR監査の意義と必要性を明確に伝え、理解を得ることが大切です。経営層のサポートがあれば、社内各部署への働きかけも行いやすくなり、組織横断的な協力体制を構築できるでしょう。
たとえば、監査に先立って社内説明会を開催することで、全社的な共通認識を持たせることができます。これは、従業員に対して「この監査は会社全体の重要な取り組みである」とアピールするよい機会にもなります。
監査を実施する上で重要なのは、監査人の専門性と客観性です。
社内監査の場合でも、CSRの基準や国際的なガイドラインに精通した人材を選定する必要があります。可能であれば、外部の有資格者を監査人として招き、透明性と信頼性を担保することが望ましいでしょう。
また、監査実施時にはヒアリングや現場観察に偏りすぎず、記録やデータ分析などの証拠を重視した方法で進めることが求められます。主観的な評価を避けるためにも、評価の基準や項目をあらかじめ文書化しておくと効果的です。
CSR監査は、一度きりの活動ではなく、継続的な改善につなげる仕組みとして運用することが理想です。
監査はPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルにおける「Check(評価)」の役割を果たすものです。その結果を「Act(改善)」につなげ、次の「Plan(計画)」「Do(実行)」に反映させることで、CSR活動全体の質が向上します。
たとえば、監査結果をもとに作成されたアクションプランが、実際に改善をもたらしたかどうかを検証する場として、再監査や定期的なモニタリングを設定することも有効です。これにより、単なる形式的な監査から脱却し、組織としての信頼性・社会的価値を継続的に高めていくことが可能となります。

CSR監査で評価を得るためには、購買・調達にも目を向ける必要があります。資材の品質・性能・価格などの要素に加えて「環境」「労働環境」「人権」といったCSR側面にも配慮した調達を行うことで、企業の社会的責任を示すことができます。
直接材の4倍もの発注量があるといわれている間接材購買に特化したビズネットの「購買管理プラットフォーム」なら、誰が・いつ・何を購入したかなどの購買実績を可視化でき、サプライチェーンの透明性を高め、監査時の説明責任を果たしやすくなります。また、不正取引やルール逸脱の防止に貢献し、監査対応力も向上します。
「購買管理プラットフォーム」のその他の特徴は、以下のとおりです。
すでに14,000社以上の企業が導入している実績があり、CSR監査対応力の強化とサステナブルな購買体制の構築に役立ちます。
CSR監査は、企業の社会的責任を具体的かつ継続的に実現するための重要な手段です。法令遵守やリスク管理に加え、企業価値の向上や信頼獲得にもつながるため、調達・購買部門をはじめ全社的な取り組みとして推進すべきといえます。
監査を通じて明らかになった課題を改善につなげ、サステナブルな経営と責任あるサプライチェーンの構築を目指しましょう。
ビズネットの「購買管理プラットフォーム」なら、購買実績の可視化などにより、CSR監査への対応やサステナブルな購買活動を実行しやすくなります。導入や運用に向けたサポート体制も充実していますので、まずはぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
ビズネット株式会社
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