企業にとって購買部は、企業のコストや利益に関わる重要な部署の一つです。役割としては、最適な商品やサービスを適正な価格とタイミングで調達することにあります。しかし、購買業務を適切に行うためには、明確な目標の設定とKPIの設計が必要不可欠です。

購買部の目標は、品質やコスト、納期に基づいて設定されるのが一般的ですが、具体的にどのように目標を設定し、達成するための流れやKPIをどのように考えるべきかは、多くの管理職が頭を悩ませる課題でしょう。

この記事では、購買業務の目標設定方法や流れ、KPIの設計方法を詳しく解説します。

購買部の業務目標はQCDに基づいて設定


購買部は、事業運営や営業活動に必要な商品やサービスを調達する業務を担当する部署です。購買業務を最適化するためには、他の部署と同様に目標設定を行うことが欠かせません。
購買部の業務目標を設定するにあたっては、「QCD」の考え方が重要です。QCDとは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の頭文字を取ったもので、購買業務の3大要素を表しています。
  • Quality(品質): 高品質の商品やサービスを調達すること
  • Cost(コスト): 仕入れ額や人件費などのコストをコントロールすること
  • Delivery(納期): 必要な時期に適切な量を確保すること
購買目標の一例としては「年間の受入不良率を2%以下にする」や「原価低減率を5%向上させる」などが挙げられます。目標をもとに日々の業務の最適化や調達戦略の見直しを行うことが重要です。

購買業務の目標設定から達成までの流れ


購買業務の目標達成を目指す際は、目標設定から達成までの流れを事前に把握しておく必要があります。この流れを効果的に推進するためには、PDCAサイクルの活用が一般的です。
PDCAサイクルを回すことで「Plan、Do、Check、Action」の流れで業務の見直しや最適化が可能となり、継続的な改善を実現できるでしょう。以下では、購買業務におけるPDCAサイクルの具体的な回し方とポイントを順番に紹介します。

P:購買状況の見える化により目標とKPIを設計

まずは購買部の業務をスムーズに進行するために、現状の購買状況を明確に把握する必要があります。
これは「見える化」と呼ばれるステップで、具体的な数値データをもとに、自社の購買業務においてどのような課題や問題点が存在するのかを明らかにします。この段階での情報収集は「Plan(計画)」における目標設定の基盤となるため、重要です。
購買状況が明確になったら、課題や問題点をもとに目標とKPIを設計します。KPIは目標に対する業務の進行状況や成果を数値化して評価・計測する指標で、目標達成の具体的な方向性や進捗状況を確認することが可能です。

D:対策や購買担当者を決めて施策の実施

目標を設定しKPIを設計できたら、次に「Do(実行)」のステップとして具体的な対策を立案し購買担当者を決定した上で施策を実施していきます。具体的な施策としては、新規取引先の開拓や既存取引先への再交渉、購入戦略の採用などが挙げられるでしょう。
また、施策を実施する際は、責任範囲を明確にするために必要に応じて担当者を指名し、役割と業務範囲を決めることも必要です。事前に定めた施策を適切に実行していくことで、購買目標の達成に向けたプロセスを効果的に進められます。

C:購買状況が改善されたかの調査と評価

続いては「Check(評価)」として、実施した施策によって購買状況がどのように改善できたのかを調査・評価します。施策の実行後、購買状況がどのように変わったのかを具体的な数値や実績をもとに検証することが重要です。
設定した目標・KPIに対して成果がどの程度得られたのか、どの部分が未達成でどのような課題が存在するかを確認するプロセスは、購買業務の透明性を高める役割もあります。
また、この段階で取引先別の商品の品質やコミュニケーションの質、供給比率の状況、購買部内の業務フローなども確認することで、より詳細な評価を行うことが可能です。

A:評価に基づいた購買業務改善

最後に「Action(改善)」として、Cのフェーズで確認した評価をもとに、購買業務全体の改善活動を進めます。具体的には、新しい施策の策定や既存施策の最適化、不要な業務プロセスの削減など、評価に応じてさまざまな取り組みが考えられます。
また、発注先に改善してほしい内容を伝えるなど、交渉やコミュニケーションを行うことで、購買業務の品質向上が期待できます。
このサイクルは購買部門が常に最適な状態を保つためのプロセスとなるため、一度遂行して終わりではなく、継続的な改善が必要となります。

購買部の業務目標を達成するために設定する主なKPI


購買業務を効果的に管理し、目標を達成するために重要となるのがKPI(Key Performance Indicator)の設計です。精度高くKPIを設計することで、業務の方向性や目標達成度を明確に捉えられます。
購買部のKPIには、以下のようなものがあります。
  • 受入不良率
  • 原価低減率(CR率)
  • 納期遵守率
  • 調達L/T(リードタイム)の短縮率
  • 購買部のEDI化率
これらのKPIは、自社における購買業務の性質や目標に応じて適切に選択・調整することが必要です。ここでは、上記で挙げたKPIの詳細や適用方法について解説します。

1.受入不良率

受入不良率は、購買部の業務の中でも品質に関する重要なKPIとして位置づけられます。この指標は、購入した資材のうち受け入れられなかった不良品の割合を示すもので、「受入不良率=不良数 / 納入数」で算出するのが一般的です。
不良品の発生が多い場合、購買業務の質の問題だけでなく、取引先の品質管理の問題や物流業者の問題など、さまざまな要因が考えられます。
受入不良率が悪いと、再調達の手間やコスト増加が発生する可能性があるほか、遅延や工程全体における効率の低下を引き起こすおそれがあります。そのため、受入不良率をKPIとすることは、生産効率やコスト削減の観点から重要といえるでしょう。
また、受入不良率のデータを活用して、取引先への品質改善の交渉や、新たな調達先の選定にもつなげられます。

2.原価低減率(CR率)

原価低減率は、ビジネス業界ではCR(コストリダクション)率とも呼ばれ、購買部の業務の中でも企業の利益に直結するKPIです。購買部が取り組むコスト削減活動の効果を数値化して示すもので、施策や対策を実施したことで原価をどの程度抑えられたのかを割合で示します。
コスト削減は、多くの企業が効率化や利益率向上を目指す上での重要な目標の一つとなっています。特に製造業や物流業など、原材料や部品調達のコストが影響しやすい業界では、原価低減が業績向上につながりやすい特徴があります。
購買部は、調達先(サプライヤー)の選定や交渉、契約の見直しなどを通じて、購入コストの削減を行います。原価低減率は購買部の成果を定量的に確認できるため、人事評価の明瞭化にもつながるKPIです。

3.納期遵守率

納期遵守率は、購買部門の全体納入件数に対して納期が守られた件数の比率を示すKPIです。納期遵守率が高い場合、サプライヤーとの契約が遵守され、生産活動や業務がスムーズに進行していることを意味します。
一方で、納期遵守率が低い場合、生産ラインの停滞や納品遅延などのリスクが高まっていることを示しています。
納期の遅れは企業の業績や信頼性にも影響を及ぼす可能性があるため、納期遵守率が一定の基準を下回る場合には迅速な対応が求められます。
具体的な対応としては、サプライヤーに対する是正勧告などが一般的です。是正勧告によって、問題の原因を特定した上で再発防止策を実施できます。改善が見込めない場合は、サプライヤーを変更するなどの対応が必要となるでしょう。

4.調達L/T(リードタイム)の短縮率

調達リードタイムの短縮率は、過去のリードタイムと比較して現在のリードタイムがどの程度短縮されているのかを示す指標です。
そもそも調達リードタイムとは、必要な資材や部品を発注してから実際に到着するまでの時間を指します。この時間が短いほど、企業は柔軟な生産計画を立てやすく、在庫を最小限に抑えることが可能です。
一方で、リードタイムが長くなると、企業は予測困難な事態に対応するために余分な在庫を保持しなければならないなどのリスクが発生します。
また、調達リードタイムは、サプライチェーンの効率性や調達プロセスの改善を客観的に評価する上でも役立ちます。企業はこのKPIを活用して、調達プロセスの最適化やサプライヤーとの関係強化などの施策を進めることが可能です。

5.購買部のEDI化率

購買部の業務効率化と正確性の向上につながるKPIの一つが「EDI化率」です。EDI(Electronic Data Interchange)とは、取引情報を電子化して効率的にやり取りする手法のことを指します。EDI化率は、購買業務がどのくらい電子化・自動化されているのかを数値で示した指標です。
ビズネットでは、自社が提供している「購買管理プラットフォーム」とお客様の会計システムなどを連携させる「購買・請求E2Eデジタル化」というサービスを提供しています。購買業務と支払い業務をまとめてシステム化できるため、EDI化率を高めたい企業におすすめです。
このサービスを導入した東京電力の事例では、電話やFAXでの購買や手入力による作業で時間とコストを要していた業務を、システム導入によってシステムへの入力レスになったほか、発注も全てデジタル化したことで1/3の作業時間まで短縮することに成功しています。また、サプライヤー側でもミスや業務工数が大幅に削減されました。

購買業務の目標設定はコスト削減や生産性向上につながる

購買業務の目標設定は、組織全体のコスト削減や生産性の向上に直結する重要な業務です。この記事で紹介した流れを参考に、購買部のKPIを設計して管理することで、継続的な改善がしやすくなり、業務効率化や利益率の拡大を実現できます。
購買業務の目標を達成するためにシステムの導入を検討している企業は、「購買管理プラットフォーム」の導入がおすすめです。このサービスを導入することで、これまで手作業で手間がかかっていた業務を一元化でき、購買業務の効率化とコスト削減に大きく寄与するでしょう。自社に購買管理システムの導入を検討している方は、ぜひ「購買管理プラットフォーム」の導入をご検討ください。

この記事の監修者

ビズネット株式会社

受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。

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