マーケットプレイス 注意点

インターネット上で売買取引ができるマーケットプレイスは、利用企業にとってさまざまなメリットがあります。売り手側である販売企業は販売コストの削減、買い手側である発注企業は調達コストの削減などが可能です。また、売り手、買い手双方の企業は取引先を豊富な企業のなかから選べるうえ、新規取引先の開拓も容易です。ただ、マーケットプレイスは良い面ばかりではなく、利用する際にはいくつか注意点があります。今回は主に、買い手側である「発注企業(購入企業・調達企業)」の立場からBtoB(Business to Business:企業対企業の取引)のマーケットプレイスを利用するうえでの注意点とマーケットプレイスの利用に向いている業界、業種、企業について解説します。

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マーケットプレイスを利用する際の注意点

マーケットプレイスを利用する際の問題点や注意点として以下が挙げられます。

信用リスクがある

多数の企業が取引するマーケットプレイスでは、信用リスク(与信、納期、品質など)に対する十分な保証が得られない可能性があります。具体的には、発注する企業側には、納品遅れや製品の不備などのトラブル対応が迅速に行われないなどのリスクが、販売する企業側には売上債権の回収が確実にできないなどのリスクが考えられます。利用にあたっては、事前に十分な検討が必要です。

コスト削減にならない可能性がある

マーケットプレイスの利用の目的は、通常の取引よりも調達に必要な人件費などのコストや資材・部品の仕入れコストの削減です。しかし、本来の目的であるコスト削減効果があまり得られないどころか、逆にコストが増える可能性があります。例えば、以下の可能性が考えられます。

  • 少量発注資材・部品などは、配送料まで含めると高いコストになるかもしれません。
  • 計画的、定期的、長期的に調達する資材・部品は、特定企業と取引をして量のコミットなどをして調達するほうがコストを削減でき場合があります。
  • 生産の変動に対する緊急の納品対応が必要な資材・部品の場合、必ずしもきめ細かな緊急対応をしてもらえるとは限らないマーケットプレイス経由の調達よりも、特定の企業との取引を結んだ方がいい場合もあるでしょう。
  • 単に調達業務をマーケットプレイスに移行しても、調達窓口がウェブベースになるだけで調達コストに大きなウェイトを占める間接費が下がらない可能性が考えられます。

取引先の顔が見えない問題がある

インターネットを利用するマーケットプレイスでは、取引先企業の顔が見えません。信用リスクは、必要な情報をデータとして提出してもらうことである程度の解消ができますが、フェイストゥフェイスで相対した場合の安心感を持てる場合が多いでしょう。この点において一般的な取引に比べるとマーケットプレイスによる取引は、信用に対する最終的に確信が持てない部分が残ります。

マーケットプレイスの利用に向いている業界・業種

マーケットプレイスの利用に前述のような注意点がありますが、この注意点に考慮して利用すればマーケットプレイスのメリットを活用できます。製造業のように多くの資材・部品、その他生産に必要な消耗品などを大量にリピート購入する業界は最もマーケットプレイスの利用に向いています。しかし、製造業だけでなく建設、運輸、エネルギーなど業界・業種にかかわらず資材・部品の調達が必要な企業はマーケットプレイスを活用することができます。活発な取引が行われているマーケットプレイスでは、多量の取引が行われて需要が大きいため必然的に価格・品質に優れた資材・部品の調達が可能です。特にマーケットプレイスの利用に向いている企業の特徴について紹介します。

向いている企業の例

マーケットプレイスの利用に特に向いている企業は、以下のような調達をしていたり調達に問題を抱えたりしている企業です。

  • 価格交渉をできるほど大量の調達量ではなくコスト削減が思うようにできていない企業
  • 調達部門に十分なコストをかけられない企業
  • 品質や納期が安定している資材・商品を主に調達する企業
  • 一次、二次問屋を経由するなど流通経路が長い資材・商品を調達する企業(マーケットプレイスを利用した方が納期、コスト面で有利)
  • 従業員数や拠点数が多く、文具・工具など少額で在庫管理の面倒な消耗品の調達が効率化できていない企業(全体として調達量は多いのに、多数の部門からの小口発注でコストダウンができていない企業)
  • 海外の業者を含めて多数の業者との折衝や調査に時間がかかっている企業(事業拡大や新分野への進出などで、今までに調達していない資材・部品の調達が必要な企業)
  • 多数の企業から資材・部品仕入れているために事務処理の負担が大きい企業

サービス業もオフィス用品の調達に便利

一方、資材・部品などの調達が不要なサービス業は、マーケットプレイスを利用するメリットはあまり感じられないかもしれません。しかし、サービス業でもオフィスで利用する文房具や工具などさまざまなオフィス用消耗品の調達に利用できます。これらの多くは一回の調達は、比較的少量・少額なため調達の際にコスト交渉ができないことも多いでしょう。これらは、単価は小さくても、日々かかる経費であるため、累積すれば大きな金額になります。マーケットプレイスを利用することで、一回あたりの発注量は小さくてもコスト削減ができる可能性があります。

マーケットプレイスの今後

多くの企業に利用価値の高いBtoBのマーケットプレイスは、以下に述べるような機能面の課題がありますが、これらの利用上の問題点は順次解消されていくでしょう。また販売や調達をEC化していない企業のEC化率の向上とともに、マーケットプレイスは今後まだまだ拡大していくと考えられます。

機能面の充実が課題

しかし、マーケットプレイスがより広く利用されていくためには課題がまだ残っています。現在、以下のような機能がマーケットプライスに求められています。

  • トラブルの仲裁・解決機能

売り手と買い手の企業間で契約不履行のようなトラブルが発生した場合の仲裁・解決のできる機能です。初めての企業との取引を顔あわせないでも安心してできるためには必要な機能です。

  • 与信・決済機能

マーケットプレイスで販売する企業が最も不安で重要視するポイントが売掛金の回収が確実にできるかどうかです。クレジットカード決済のように販売時点で決済ができる、信頼できる取引先企業の与信情報が提供されるといった機能が必要です。

  • 保険による補償機能

発注側への補償として、購入した資材・部品の不具合や損傷、あるいは納期遅延による損害に対する補償が確実に得られないと利用の拡大にはつながりません。発生した損失が補償される保険のような制度が求められます。

  • 格付けによる円滑な取引機能

与信情報とともに、取引前の信用調査など煩わしいことをしなくても簡単に取引が開始できる機能が必要です。例えば、過去の取引における支払い状況や不良品の発生状況などから企業の信用レベルを格付けして公開するなど、円滑な取引をサポートする機能が考えられます。

海外で成功しているマーケットプレイスの事例紹介

実際に海外で活発に利用されているマーケットプレイスを紹介します。

  • グローバルで広範な業界が参加する巨大なマーケットプレイス

多種多様な分野の製品を扱い、さまざまな国の企業が参加する巨大かつグローバルなマーケットプレイスです。多言語対応や製品比較機能など使いやすい機能が充実しています。
(事例)パキスタン発のグローバルなBtoBマーケットプレイス「TRADEKEY」
https://www.tradekey.com/

  • ある業界に特化したタイプのマーケットプレイス

「工具・機械類専門」や「繊維類専門」など業界に特化したタイプのマーケットプレイスです。市場の大きさは限られていますが、探している資材・部品が見つかりやすいという専門店のような品揃えの多い強みがあります。(事例)繊維類専門のBtoBマーケットプレイス「Fibre2fashion」
https://www.fibre2fashion.com/

  • 製品以外のものを扱うマーケットプレイス

製品だけでなく、サービスやスキルを売買するタイプのマーケットプレイスです。日本でも普及しているクラウドソーシングのようなサイトや、投資家とスタートアップ企業をつなぐサイトなどがあります。
(事例)投資家とスタートアップ企業をつなぐマーケットプレイス「AngelList」
https://angel.co/

企業の調達業務も柔軟に変化に対応することが必要

マーケットプレイスの利用範囲や使い勝手は、今後ますます広まり、改良されたりして拡大していくことでしょう。良い点や問題点・注意点を知って活用していくことで調達業務を効率化しコストダウンが実現できます。現状の業務のやり方を変えるのは抵抗があるかもしれませんが、マーケットの変化に乗り遅れず、マーケットプレイスの利用を具体的に検討してみましょう。

 

参考:

【2018年版】国内EC市場のEC化率|ebisumart Media

巨大マーケットBtoB-ECの現況と今後│Orange EC

B2B市場に迫るオンラインマーケットプレイスという潮流│トライツコンサルティング株式会社

世界のBtoB専門マッチングサイト17選│MARKEiT

海外でホットなオンライン・マーケットプレイス事例20│株式会社イノーバ

この記事の監修者

ビズネット株式会社

受発注の業務改善によって顧客サービス向上と新たなビジネスの展開を支援する「購買管理プラットフォーム」を14,000社以上の企業に提供しています。電力、電設、建設・医療・製造などの現場専門品の購買業務を最適化し、業務やコスト削減・生産性向上を実現いたします。

購買業務の見直し何からはじめるべき?

間接材購買は会社の価値を生み出すコア業務ではない上に、直接材の4倍の発注数があると言われています。
改善することで社内の生産性が上がるのですが、何から手をつけていいのかわからず
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