QCDとは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期))の頭文字を並べたもので、製造業の利益率や顧客満足度を左右する重要な要素です。QCD管理を成功させるコツを把握すれば、より効率的に顧客満足度を高めながら売上の最大化を実現できるでしょう。
今回は、QCDの意味を解説した上で、QCD管理が必要な理由や留意点について解説します。また、QCD達成に必要な管理手法やQCD管理を成功させるコツも解説するので、ぜひ参考にしてください。
QCDには、「品質・コスト・納期」という意味があります。以下では、それぞれの特徴やQCDの派生語について解説します。
「Quality(品質)」は、企業が提供する製品の品質を指します。プロジェクトを達成する上では、適切な品質マネジメントが不可欠なため、QCDの中でも最も優先すべき要素とされています。
たとえば、製品・サービスを安く、そして早く提供したとしても、顧客が要求する品質をクリアしていなければ、顧客の信頼損失につながりかねません。品質マネジメントの手法では、以下のポイントを押さえておきましょう。
手法 | 特徴 |
品質計画 | 品質を保証・改善するプロセスや経営資源などの項目を定義し、品質マネジメント計画書に記載する |
品質保証 | 品質マネジメント計画書の内容に基づき、生産プロセスや成果物が適切であるかを監査する |
品質管理 | 品質マネジメント計画書の内容に基づき、成果物の品質を検査して問題点の抽出や改善を図る |
「Cost(コスト)」は、製造から納品までにかかる費用を指します。原材料費といったコストのほか、人件費などの人的コストも含むことが特徴です。
QCDのバランスを取るには、品質を保証した上で、最適なコストと納期について顧客と擦り合わせることが重要です。特に、大規模な生産になるほど発生するコストも膨らみやすいため、適切なコストマネジメントを行う必要性は高いと言えます。
コストマネジメントの手法では、以下のポイントを押さえておきましょう。
手法 | 特徴 |
管理計画 | コストマネジメント計画書を作成し、コスト管理の基準とする |
見積もり・予算設定 | プロジェクトにかかる概算を算出するほか、見積もりの積算も行い、コストベースラインを作成する |
コントロール | コストベースラインとコストの実績を分析し、必要に応じて見直す |
「Delivery(納期)」は、製品を顧客へ届けるまでの期間・期日を指します。生産管理における上流工程から下流工程までを適切に管理して、納期を達成することが重要です。
納期管理の手法では、以下のポイントを押さえておきましょう。
手法 | 特徴 |
納期管理計画 | 納期管理を適切に行うための基準やルールを定めた「スケジュールマネジメント計画書」を作成する |
アクティビティ定義・順序の設定 | タスクの洗い出し、及びプロセスに沿ったタスクの順序決めを行う |
スケジュール作成 | タスクを実行させるスケジュールを作成する |
QCDに対して、さらに要素を加えた派生語も生まれています。自社の事業に適した派生語を活用することで、重視する方針をより明確にできるでしょう。
以下では、QCDの代表的な派生語を紹介します。
派生語 | 内容 |
QCDS(安全) | QCDに「Safety(安全性)」の要素が加わった言葉。建設業などでは、安全な作業を重視する目的で用いられる。 |
QCDSE(安全・環境) | QCDに「Safety(安全性)」と「Environment(環境)」の要素が加わった言葉。高所作業や重機操作などを行う現場で重視される傾向がある。 |
QCDSM(サービス・モラル) | QCDに「Service(サービス)」と「Moral(モラル)」の要素が加わった言葉。
「Service」は、顧客に対するアフターサービスやサポートも含めた要素。一方、「Moral」は従業員・経営者が持つべき倫理観などの要素。 |
QCDF(柔軟性) | QCDに「Flexibility(柔軟性)」の要素が加わった言葉。特にサービス業などで重視される。 |
QCDE(環境) | QCDに「Environment(環境)」の要素が加わった言葉。製造業においては、環境への影響を最小限にした生産プロセス・製品開発を進めるような場合に用いる。 |
QCDRS(リスク・セールス) | QCDに「Risk(リスク)」と「Sales(セールス)」の要素が加わった言葉。「Risk」は想定されるリスクを予測して対策を検討する考え方を指し、「Sales」は商品の売上を伸ばすための考え方を指す。 |
QCDDM(開発・経営) | QCDに「Development(開発)」と「Management(経営)」の要素が加わった言葉。「Development」は新製品・新技術への対応力の評価、「Management」は企業の経営体制・マネジメントの姿勢を判断する指標として用いられる。 |
続いて、QCD管理が必要な理由について詳しく見ていきましょう。
適切なQCD管理を行うことで、品質の向上及び利益率の向上が見込まれます。そもそもQCDの目的は、なるべくコストを抑えて、高品質な製品を迅速に生産・提供することです。
QCD管理に注力すれば、顧客満足度が高まり、リピーターの増加やロイヤル顧客の創出、ブランディングの強化などが可能になるでしょう。結果として、企業の利益率の最大化にもつなげられます。
QCD管理の改善を図ることで、生産プロセスを最適化できます。具体的な改善策としては、作業の標準化、サプライヤーの見直し、AI・IoT等の先端技術の導入などが挙げられます。
生産プロセス全体を最適化できれば、作業品質の均一化や納期の短縮を行えるため、企業の事業基盤を強化することにもつながります。
競合他社との差別化を図れることも、QCD管理が必要な理由の1つです。QCDの中でどの要素を重視するかは、自社の顧客のニーズによって異なります。そのため、注力する要素をしっかりと見極めることが大切です。
たとえば、顧客が納期を重視しているなら、納期短縮を実現できる施策に注力すると良いでしょう。顧客が品質を重視している場合は、上流である購買工程のサプライヤー選定から見直すなど、柔軟に対応する必要があります。
QCD管理を適切に実行するために、留意しておきたいポイントがいくつかあります。ここでは、留意点を2つ解説します。
QCDは、何かの優先度を上げることで他の要素に影響する「トレードオフ」の関係にあることに留意しておきましょう。トレードオフとは、品質・コスト・納期のうち、どれを優先するかによって製品に大きな影響をもたらすというものです。
たとえば、納期を短縮しようとすると工数を増やす必要があり、コストがかかってしまいます。逆に、コストを抑えようとすると、納期が遅れる可能性があるため、それぞれの要素のバランスを見ながら製品製造を進めなければなりません。
QCDの中で最も優先度が高いのは「品質」です。ただし、品質向上に向けて高性能な設備の導入や、検査項目の増加を行うと、製造・検査のコストが高くなってしまうことは考慮しておきましょう。
自社の事業内容や製品特性に合わせて、バランスを取りながらQCD管理を実行する必要があります。
ここでは、QCD達成に必要な管理手法を5つ紹介します。QCDをスムーズに達成するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
製造業における調達管理とは、生産に不可欠な資材・設備・労働力を外部から調達する管理のことです。調達管理によって集めた資材・設備などを必要部門に供給します。
調達品は、原材料や部品、副資材、エネルギーなど多岐にわたります。「業務の属人化に陥る」「各プロセスの把握が難しい」といった課題が発生しやすいため、自社のニーズに見合ったITツールを活用すると良いでしょう。
調達管理の概要や基本的なプロセスについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご参照ください。
「調達管理とは?購買管理との違いや基本的な調達管理プロセスについて」
スコープ管理とは、製品の品質基準・作業範囲を定義して管理することです。スコープ管理は、以下のように2種類に分かれています。
成果物スコープ | プロジェクトにおける成果物に焦点を当てて管理する手法。基本設計を例に挙げると、仕様書・設計書が成果物スコープの対象となる。 |
プロジェクトスコープ | プロジェクトにおける作業範囲を明確にする手法。基本設計や製造など、各プロセスにおける作業内容を明確化する。 |
要員管理とは、プロジェクトに必要なメンバーを選定して、チームを組織した上で管理することです。製造部署に限らず、営業や物流、品質管理など各担当者を交えてチームを作ることで、課題に対してより柔軟に対応できるでしょう。
このように要員管理は、プロジェクトを迅速かつ的確に進行させる重要な役割を担っています。
コミュニケーション管理は、プロジェクトチームにおける情報の共有・伝達を管理することです。定期的な会議や打ち合わせを通じて、プロジェクトの進捗確認やスケジュールの見直しなどを行います。
また、コミュニケーション管理を適切に実行するには、ステークホルダーの動向も注視しつつ、情報を適切に伝えることが重要です。万一、誤った情報が伝達するとプロジェクトに影響を及ぼすおそれもあるため、情報が正確に伝わっているかをしっかりと確認しましょう。
リスク管理は、製造で想定されるリスクを抽出・把握した上で、リスクの低減もしくは回避に向けた管理をすることを指します。組織・プロジェクトに与える影響はリスクの種類によって異なるので、生産プロセスごとにリスク管理を行うことが大切です。
なお、プロジェクトでコントロールできるコストやスケジュールなどは「内部リスク」と呼ばれ、プロジェクトでコントロールできない天候や法改正などは「外部リスク」と呼ばれています。
QCD管理を達成するには、チーム・外部関係者が信頼関係を構築し、一丸となって取り組む必要があります。そのためメンバー間はもちろん、外部関係者とも活発にコミュニケーションを図り、協力を得られるようにしておくことが重要です。
また、QCDの改善を成功させるには、製造現場のスタッフの意見も積極的に取り入れて、施策を打ち出すと良いでしょう。
QCDの改善で重要な役割の一つである「購買管理」の目標設定については、以下の記事で詳しく解説しています。
「購買業務の目標設定についてどう考える?購買部を管理している管理職・役職の人に向けて徹底解説」
QCD管理は、品質・利益率の向上や生産プロセスの最適化に向けて重要です。ただし、QCDの「品質・コスト・納期」はトレードオフの関係にあるため、顧客のニーズも踏まえつつ、重点を置く要素を決める必要があります。
また、QCD達成に向けて重要な役割を担うのが、原材料や部品の調達管理です。そこで購買管理システムの導入を検討するのも1つの手段です。購買管理システムを導入すれば、調達コストの削減を目指せる上、QCDのコスト管理を支援できるでしょう。
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この記事の監修者
ビズネット株式会社
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