企業の永遠の課題である業務効率化を失敗で終わらせないためには?

コラム

近年、少子化による労働人口の減少や働き方の多様化などにより、多くの企業で人手不足が深刻化しています。そして、国はそのような社会情勢の変化に対応するため「働き方改革」の実現を目指しています。慢性的な人手不足に陥っている企業にとって「業務効率化」が必要不可欠です。ただ、業務効率化はそう簡単に実現できるものではなく取り組んではみたものの、うまくいかずに失敗したという企業が後を絶たない厳しい現実があります。今回は、業務効率化を考える企業の担当者のために、業務効率化の基本から取り入れるメリットや効率化の方法を解説します。また、実際の成功事例もあわせて紹介します。

業務効率化は「コストの削減」につながる

そもそも業務効率化は何のために行うのでしょうか。業務効率化を行う最大の目的は、「コスト削減」です。業務効率化に成功できれば人員を削減でき業務時間を短縮できて人件費という大きなコストを減らせます。

しかし、従業員によるボトムアップでの業務効率化活動は、従業員にとって成功させれば自身の給与が下がり、働く場所がなくなる可能性があるのでなかなか成功しません。そのため業務効率化によるコスト削減は、経営者のリーダーシップに基づくトップダウンでの活動が必要です。

業務効率化の規模や方法はさまざま

業務効率化は、多額な経費をかけないで従業員が業務遂行方法を工夫してスピードアップを図ることも1つの方法です。一方、企業として業務のやり方を大きく変えるために大規模なITシステムを導入する方法も業務効率化です。個々の従業員のレベルから各組織単位、あるいは全社で行うなど規模だけを考えてみても幅広い方法があります。技術の進歩とともに新たなシステムが開発されることも考えると、その方法は無限にあるといえるでしょう。

上手に業務効率化を進めるには

業務効率化はトップダウンでないと成功が難しいと説明しましたが、いきなりトップダウンで全部門に業務効率化の実施の号令をかけても成功は難しいでしょう。経営者として業務効率化を行うリーダーシップを発揮する必要はありますが、現場のことをよく分からずに押し付けで実施するトップダウンで行うと失敗します。

業務効率化の活動は、現場の問題点をしっかり調べて、現場の従業員の声も聞き1つの小さな部門で試して、そのときの問題点を改良・改善して全社に導入するなどの準備と工夫が必要です。特に多額の経費をかけて、全社にいきなり導入を行うときは失敗したときのリスクが大きくなります。

業務効率化のメリットは「経営体質の強化」

業務効率化で得られるメリットは、コスト削減、モラルの高い従業員の定着、および事業拡大につながる新たなアイデアの創出による「経営体質の強化」です。

コスト削減

業務効率化を行う最大の目的は「コスト削減」です。コスト削減ができると「少ない資産を効率的に活用して高い利益を上げられる」ので筋肉質の経営ができます。なお、経営者としては、総コストの削減だけではなく総資産利益率(ROA)が業務効率化実施前よりもどれだけ上げられたかにも注目する必要があります。

総資産利益率とは、利益を総資産(自己資本+負債)で割って求められる指標で、総資産を使ってどれだけ利益を生み出したかを示します。総資産利益率を高めるには、「売上高利益率を上げる」か「資産回転率を上げる」の2つの方法があります。

従業員が定着しやすくなる

コスト削減によって得られた資金で社内環境や福利厚生、および給与に反映させることで従業員の定着率を上げられます。また、業務効率化を推進すると無駄な業務が減ることで能力のある社員にとっては能力をより発揮しやすくなります。結果として、優秀な社員の定着率が上昇し経営体質も強化されます。

新たなアイデアの創出

業務に追われた忙しい状態では、現在の経営状態を革新できるような新しいアイデアの創出は望めません。業務効率化を推進すると、効率化を考える過程で経営に貢献するような新しいアイデアも生まれやすくなります。また、新しいアイデアを試すにも時間や資金に余裕がなければできませんが、その資金にコスト削減で得られた資金を充てられます。新しいアイデアがたくさん出る企業は従業員の働くモラルも高く経営体質も自然に強化されていきます。

「入念な準備」が業務効率化の成否を分ける

成功しないケースが多く見られる業務効率化を失敗せずに成功させるにはどうすればよいかについて解説します。

業務の可視化

経営者としては、まず既存業務の可視化が必要です。業務の可視化とは、業務の流れやプロセスを見えるようにすることです。具体的には業務のフローチャートや社員のスキルマップなどを作成します。これによりどのような人がどのような業務をどれくらいの時間をかけて行っているのかが客観的に把握できます。業務の無駄を探し出すためには業務の可視化は必要不可欠です。

無駄の洗い出しと業務効率化の優先順位付け

可視化によって見えてくる業務の流れやプロセスに無駄がないかを徹底的に洗い出します。洗い出された無駄のすべてを改善できれば理想ですが、従業員のスキル不足や費用の問題などで簡単に改善できない無駄もあります。そこで、「今すぐできそうなこと」「いずれする予定のもの」などに分類し、何から優先すべきかを検討します。

現場の声を収集

上記の2つを行う際に注意しなければならないことがあります。それは事前に現場の声を収集することです。業務の効率化は「業務のやり方を変える」ことですが、従業員にとって、今まで行ってきたやり方を変えられるのは大きなストレスとなる可能性があります。例えば新たな機械を使うことで効率化できても、機械に不慣れな人は使いたがりません。便利だと思って導入したものの現場では有効に活用されず業務効率化ができなかったケースもあります。業務のやり方を変えるには、現場の声を聞き効率化のための手法が現場に受け入れられるかを検討しなければなりません。受け入れられることが難しければ受け入れられるような環境にしてから実施しないと失敗します。

なお、業務効率化につながる業務の「改善」レベルのアイデアは、アイデアの質や量に応じて従業員に奨励金を出す制度を作ることで従業員主体による推進が可能です。アイデアの実現にコストが発生する場合は、経営者として効果の測定をしっかり検討することが必要です。

経営者が行う業務効率化の方法

経営者がリーダーシップをとって行うべき業務効率化の方法を紹介します。

残業禁止や人員の再配置

業務の可視化によって業務に対して過剰な人員の存在や、業務間に人員配置のアンバランスや、必要性のない残業などが見えたときは、経営者がリーダーシップをとって、残業廃止、従業員の配置転換、および場合によっては最終的な手段として人員整理を合理的な方法で行います。

アウトソーシングへの転換

経営資源を集中させるため、また固定費を抑制するため、あるいは顧客サービスの充実のためなど経営合理化につながる業務効率化の手法として業務の一部を外部へ委託する「アウトソーシング」を行います。

ITシステムの導入

IT技術は日々進化しています。最先端のIT技術を導入し業務をシステム化することで、単なる業務効率化にとどまらずシステム化によって新たな付加価値を経営に加えることも可能です。

「システムの導入」や「アウトソーシングの利用」で業務効率化に成功した事例

購買業務のシステム化

在庫管理システムをパッケージソフトで運用していたある企業は、徐々に少量多品種生産への移行や需要変動が大きくなり、原材料・部品の手配・変更に手間がかかるようになっていました。そのため生産の無駄と顧客への納期トラブルなどの大きな問題が発生。そこで、生産・販売業務の運用を見直し、需要予測の精度を高め、製造に必要な原料、副資材の欠品防止や手配ミスなどを削減できる生産・販売・在庫管理が連動したシステムとなるようにパッケージソフトをカスタマイズしました。これにより生産コストを削減し、顧客満足度アップの両方を実現したのです。

EC業務をアウトソーシング

ある事務機器販売会社は、自社運営のECサイトからの売上が伸びてきて、ECサイトの運営者が在庫管理や出荷などのバックヤード業務に忙しくなり、商品企画や販促、あるいは顧客からの問い合わせ対応といった重要な業務に集中できない状況になりました。それだけでなく、受注から出荷までのリードタイムが長くなり顧客満足度も低下するという問題を抱えていました。そこで、物流業務だけをアウトソーシングするのか、ECサイトの運営業務を含めてアウトソーシングをするのかを同社は検討。現状ではECサイト運営者の増員も必要なことが分かったため、固定費は経営上これ以上増やしたくないという社長の判断でEC業務全体をアウトソーシングすることに決定。

これにより、教育コストや募集費用も発生せず固定費の上昇もなく、さらに外部のECサイト運営の高いスキルが利用できるメリットが得られました。その結果、経営資源をより重要な業務に振り向けられて顧客満足度を上昇させることにも成功しました。

業務効率化は企業の「永遠の課題」

業務効率化は一度実施すれば終わりではなく、企業にとっては永遠の課題です。常に意識していないと業務の無駄が生じます。有名な自動車企業には「乾いた雑巾を絞る」という文化がありますが、それは無駄を削減するだけを意味するのではなく知恵を出しきることだといわれています。徹底して業務効率化を追求する意識が重要です。

また、現代においては、固定費を変動費に変えて変化に柔軟に対応できる会社体質にする経営視点も重要です。アウトソーシングは固定費を変動費に変えられるとともに、社内にない専門的なスキルも活用できるので検討することも必要です。